
移行中のトランスジェンダーにとって、お風呂というのは、トイレと同じく大きな悩みのタネの1つにもなる。
特に、パッと見女性として通用するようになってからが、私個人の経験からして、一番大変だったように覚えている。
お風呂の場合には特に、大変だった。
お手洗いであれば、用を足すのは個室の中であり、人前で脱いだりはしないので、ある程度は自分自身の外見に合わせて、自分を守るためにも問題ない方を選べばいいのだが、お風呂は裸になるので、やはりぱっと見の外見だけでは問題がある。
時折、自分の気持ちだけで突っ走り、強行突破をするなんてことも耳にはするが、周りへの迷惑もさることながら、自分自身がやはり一番辛く傷つく結果になるので。気持ちだけで突っ走って問題を起こすなんてことはあってはならないと思う。
手術前の身体からしても、変更前の戸籍上の性別にしても、どう考えても何かトラブルがあった場合には不利にしか作用しない。
これは、自分自身がもう全て済ませたからと、上から言っているのではなくて、自分自身が嫌な思いをしないためにも、大切な事だと思うため書かせて頂いたのと、今回このような“移行中のトランスにお勧めしたい旅“をシリーズものにして作成した次第だ。
では、前置きはこのくらいにして、早速本題に移りたいと思う。
湯ノ峰温泉とは
湯ノ峰温泉は、和歌山県内にある温泉地であり、熊野参りの峠越えの途中にある温泉地で、熊野本宮温泉郷の一つ。
開湯約1800年の日本最古の温泉かつ、全身浴のできる数少ない貴重な温泉として知られる有名どころであり、本宮大社からもバスで10分程度。
2004年に熊野詣の湯垢離場として、世界遺産に登録された“つぼ湯“は、川岸にある湯船の底から自然に湧き出る温泉で、足元湧出温泉と呼ばれる全国的にみても珍しい形態の温泉だそうだ。
今回は、この湯ノ峰温泉の“つぼ湯“を、移行中のトランスジェンダーにお勧めしたい温泉として、ご紹介させていただきたい。
つぼ湯
“つぼ湯“は、湯船の底から直接湧き出ることで空気に直接触れることがないため、温泉事態が酸化しないため、常に新鮮なお湯に浸ることができる温泉で、日によっては、一日に7回も色が変わるなんとも不思議な温泉でもある。
また、全身浴のできる温泉としては、世界遺産として登録された世界的にみても唯一無二の存在としても知られている。
“つぼ湯“自体は、2〜3人が浸かれるかどうかの小さな湯船で、川岸に湯船を隠すように建てられた簡素な古屋の中にあり、石鹸の利用ができないなど、温泉を楽しむためだけにこだわり抜かれた場所である。
つぼ湯の利用方法と営業時間
つぼ湯の営業時間
- 営業時間 午前6時〜午後9時30分まで
- 定休日 なし
- 形態 混浴貸切で30分交代制
つぼ湯の入湯料金

現在湯ノ峰温泉の大衆浴場は改修工事に入っているので、当温泉で入湯できるのは“つぼ湯“のみである。
だとしても、“つぼ湯“だけを目当てに来ても十分価値のある場所である。
そんな世界に一つだけの“つぼ湯“ではあるが、それを信じられないくらいに何度も見直してしまうくらいの驚きのお値段。
もちろん、順番や時間の制限があるとはいえ、ものすごく良心的な入湯料である。
“つぼ湯“の利用方法

“つぼ湯“から通りを挟んだ向かい側に、“つぼ湯“や汲み取り湯の受付窓口があるので、そこに行き入湯希望の旨を伝えて、入湯料を支払うと、番号札を手渡される。
その番号札を持って、“つぼ湯“に行くと、入り口の戸の横に札をかけるところがある。
先客がある場合には、自分の手渡された番号札よりも若い番号の番号札がかかっているため、その場合は自分の順番が来るまで待つ。
タイミングよく、待ちなしで入湯できるとなった場合には、自分の番号札を戸の横にかけて、中に入り鍵をかけて、入湯する。
そして、古屋内にある時計で時間を確認して、持ち時間の30分内でゆっくり温泉を満喫しよう。
ただ、湯ノ峰温泉の大衆浴場が改修工事ということに加え、周辺には温泉以外には特に見所がないので、タイミングが合わなければ時間を持て余してしまうことになるので、日帰りで行く場合は、混み合いそうにない時間を極力避けたり、近隣の宿に前泊するなどして、訪れるのがいいかもしれない。
なぜ、“つぼ湯“が移行中のトランス当事者におススメなのか


湯ノ峰温泉の“つぼ湯“の温泉形態が混浴貸切であるということ。さらに他の貸切温泉に比べても、良心的な価格設定であるということ。そして、ただ温泉に浸かり癒されるという理由だけではなく、日本最古の歴史に想いを馳せながら入湯できるという魅力たっぷりな温泉であると言う事と、熊野参りの峠越えの途中にある立地から、山道の入り口に当たる“つぼ湯“の前には、休憩できる椅子と清潔感のある男女共用の公衆トイレがある。
湯ノ峰温泉の見所と言える場所へは、ここから徒歩圏内に全てあるため、ここをベースに各所見てまわれば、トイレにも困ることもない。
そう考えると、移行中のトランスでも散策しやすい観光地であるということがわかる。
湯ノ峰温泉を散策してみよう



周辺の見所も散策してみよう
筒湯
こちらも、川岸にある湧き出る源泉を溜め、約90度近くの熱湯に野菜やたまごなどを茹でて調理する場所である。
湯ノ峰温泉の中心地にあり、街中で購入した野菜や卵を持ち込んで、調理を楽しむことができる。


天台宗 熊野七薬師 東光寺

湯胸茶屋

営業時間は、朝7時から夜6時までの不定休。





周辺の温泉
熊野本宮温泉郷は、湯ノ峰温泉の他、日本一広い露天風呂を有する渡瀬温泉や仙人風呂で有名な川湯温泉がある。
渡瀬温泉

ただ今回は、移行中のトランスジェンダーにおすすめするという趣旨で書いているため、今回は周辺の温泉という紹介に留めたい。

大人900円。子ども450円。
家族露天風呂は、8:00〜19:00。
大人1600円。子ども800円。
川湯温泉



湯ノ峰温泉温泉へのアクセス

本宮大社前→湯ノ峰温泉
熊野御坊南海バス 6:45→6:56
熊野御坊南海バス 8:30→8:41
明光バス 12:17→12:22
奈良交通 14:23→14:34
明光バス 14:37→14:42
奈良交通 16:58→17:09
奈良交通 18:58→19:09
湯ノ峰温泉→本宮大社前

奈良交通 7:03→7:14
奈良交通 8:56→9:07
明光バス 9:30→9:37
奈良交通 11:09→11:20
明光バス 11:43→11:50
熊野御坊南海バス 17:06→17:17
熊野御坊南海バス 19:21→19:32
お得なバスチケット
日本一長い路線バスとして知られる八木新宮特急バスが、二日間進行方向に向かって乗り放題になるお得なチケットを利用すればお得に湯ノ峰温泉のみならず周辺の温泉も訪れることだって可能。
168バスハイク乗車券
大和八木から新宮までの間には、溢れんばかりの数多くの見所が点在しており、途中下車せず通りすぎるだなんて勿体無い!!
そんな方にお勧めなのが、こちらのチケットだ。
最初に乗車した停留所から最後に降車した停留所の区間の運賃で、二日間八木新宮特急バスが乗り放題になると言う優れもの。
ただし、進行方向にしか進めないので、その点だけ注意が必要だ。
詳しくは、奈良交通のHPを参照いただきたい。
悠々フリー乗車券

こちらは、熊野御坊南海バスが販売する乗り放題チケット。
大人3200円。子供1600円。
3日間であれば、新宮と紀伊勝浦を起点とする当該バス会社のバスが乗り放題となる。
熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の熊野三山を巡るルートは、全て熊野御坊南海バスがカバーしているので、熊野三山も熊野本宮温泉郷も一緒に巡りたいという欲張りさんにはもってこいなチケットだ。
詳しくは、熊野御坊南海バスのHPを参照いただきたい。
各温泉地の詳細
熊野本宮温泉郷の各温泉地についての詳細は以下HPを参照されたい。
今回の取材の経緯
私自身、すでに手術も終え、戸籍も変えているので、特にトイレやお風呂で今現在困ることはないのですが、やはり移行中というのは、自分自身を否定することにも繋がるし、人の目が気にもなったし、やっぱり旅に限らずトイレやお風呂って苦痛な時間でした。
移行中、自分の趣味が見つけられず仕事ばかりで、旅行自体数年に一度行くか行かないかくらいでしたが、せっかく温泉に行っても当たり前のように温泉につかりに行けないという経験は今もはっきりと覚えています。
若い頃の温泉の思い出なんて、お店の仲間と変わりばんこで、部屋の貸し切り露天風呂に浸かってという思い出しかありません。
当時はそれが当たり前だったので、特に気にも留めなかったのですが、旅をするようになって、欲が出たというか、
“トランスだから、仕方がない“
じゃなくて、
“トランスでも楽しめる旅ってなんだろう“
という方向に考えることはいけないことなのだろうかを考えるようになった。
今の自分がもし当時の移行中の自分なら、この温泉地や観光地を訪れたら、どう行動するかを考えるようになりました。
男女共用であったり、だれでもトイレを見るたびに、トイレはここだから休憩はここでしてとか、貸切風呂はここが安いなとか、そう言う目で旅先を見るようになりました。
自分の好き勝手で性別移行をするわけでは決してなく、我慢は当然。自己責任で全て済ましてしまっていいのだろうか。
もちろん、自分の思いだけで法を犯したり周りに嫌な思いをさせてはいけない。
だけど、可能な範囲で最高に楽しい一時を過ごせるように工夫を凝らしたり考えを巡らせるのは悪いことではないし、積極的にすべきだと思う。
そのきっかけとなれたら私は嬉しい。
そう考えて、今回取材を決意した。
さいごに
トランスだからといって、トイレにしても、お風呂にしても、ネガティブな方向に考えてしまうタネになってしまうのだけれども、私個人としては、トイレに関しては、周りからの見た目にとって相応しい方、そしてお風呂は少なくとも身体を変えてからという考えを持っています。
それは、周りとのトラブルを避けるためです。
最初に述べたように、周りの気持ちを汲むためというのももちろん、自分自身の安全と気持ちを守るためです。
気持ちだけで突っ走りたくなる気持ちもわかりますが、その気持ちを現状可能な形で満たせるようにと、今後もこのような取材と発信を続けていきたいと考えています。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。
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