
こんにちは。
トランスジェンダーとして生きていると、好きな人ができた時には自分の素性を明かすか明かさないか。明かすなら付き合う前なのか付き合った後なのか、それを明かしたことによって関係が壊れてしまうのではないか等々、悩みは尽きないと思います。
恵まれたことに、私は4年前に今の夫と知り合い、3年前に入籍結婚に至り、今は仕事の関係で離ればなれになることもありますが、時には甘え甘えられ、時には喧嘩しながら、それなりに幸せに過ごしています。
そういう状況を簡単に手に入れたかというと、実際そうではありませんでした。上に書いた悩みの数々にむせ返り呼吸困難になるんじゃないかってくらい泣きはらし、一時は自分の境遇を絶望したり恨んだり、閉じこもったりしました。
本当に、当事者にとっては嫌でもぶつかってしまう大きな壁というのでしょうか。
でも、その壁の前に立ち止まらなかったからこそ、今日の私がいるわけです。
今回は、私がトランスジェンダーとして体験した恋愛や結婚について大きく悩まされ考えさせられたことを書きたいと思います。今まさに恋愛において悩んでいる方やこれから悩まれるかもしれない方の目に留まり、一つの体験談として読んでいただけたら幸いです。
元婚約者との出会い
話は、私が28歳の時にさかのぼります。東南アジアに住み着いて、現地で就職をして安月給なりにそれなりに楽しく生活していました。周りのスタッフは現地に家族を迎えて生活していたり、現地でパートナーを見つけたり、単身赴任だったり、私のように独り身で生活していたりと、働いていた日本人の生活スタイルは様々でした。
そんな折、少し前に辞めた人が会社あてに結婚の知らせのお手紙をくれたり、地元の幼馴染から結婚の知らせを受けたり、そういう年回りだったのでしょう。突然、結婚・将来・老後という言葉が自分の頭の中をグルグル回るようになりました。
それからしばらくして、今のままの生活をしていてはまずいと会社を辞めて帰国しました。帰国してから仕事を探していた時、以前働いていたニューハーフのお店のママから、人手が足りないから手伝いに来てほしいと誘いをいただき、お金もなかったので出戻らせていただくことにしました。
そこで、ウェイターとして働いていたのが私の元婚約者でした。元々は、別の子を追いかけていたみたいで、私も元婚約者からその子のことで何度か相談に乗ったり協力したりしました。なんというかかわいい弟のような感じでしたし、それ以外の何物でもありませんでした。
お金もそこそこ貯まったのと、新しいスタッフも入ってきたのもあって、1年後にお店を辞めて、お昼間の仕事に転職をしたのですが、お店を辞める少し前のタイミングで、元婚約者から突然告白されました。
別の子を追いかけていたはずだったんじゃないのかと一瞬よくわからなくなりました。
どうやら、その子に告白するも振られたみたいで、その次に気になっていた私のところに来たみたいです。
“なんだよ。それ・・・”
別の子というのは、私なんかと違って可愛いもキレイも兼ね備えているTHEアイドルといった感じの子でしたし、どこにでもいそうな普通な感じの私とはタイプが全然違いました。
“多分からかわれているんだな。”
がっかりした気分と苛立ちを抑えて、もちろんですが、お断りしました。
元婚約者との関係
それから1か月ほどして、私と元婚約者は付き合うことになりました。
なぜかというと根負けしたからです。告白の翌日から、ほかのニューハーフの子を巻き込んでどれだけ自分が私のことをちゃんと好きなのかをアプローチしてきたのです。
周りからも、「ここまで気持ち伝えてるんだし、付き合ってあげたらいいじゃない。」と言われるほどになり、結局周りからも押される形で“OK”の返事をしました。
“どうせすぐ離れていくだろう”
そう思っていました。最初の告白の印象が悪すぎたので、そんな風にしか考えられませんでした。
お店で働いていた間は、毎日家まで送ってくれましたし、バイクでいろいろなところに連れて行ってくれたり、時々喧嘩もしましたけど付き合いだしてからは、意外にもちゃんと大切にしてくれました。
お店を辞めてしばらくしてから、アパートを借りて同棲を始めました。亭主関白が過ぎるところもありましたけど、困った時にはやりすぎだってくらい動いてくれて、年下なのに頼りになる彼氏でした。
「いつまでもふらふらしてられないから。看護師になろうと思う。」
突然そういった元婚約者は、それまで結構高給をいただいていた仕事も、体力的に将来的にずっとできるものではないから、ちゃんと手に職をつけたいと考えてのことでした。
私たちは共働きでしたが、学費も賄ってとなると、やっぱり生活は厳しくなりますので、まず元婚約者が1人で地元に帰って学校に行く。私は私で、仕事も突然やめられないだろうし、2人して仕事を失うのも大変だから、1年間離ればなれにはなるけど、1年したら結婚を視野に一緒に地元で暮らそうと言ってくれました。
それから1年間は、関西と九州との別々の生活が始まりました。その間は、ほぼ毎日の電話と月1~2回のペースで私が九州へと足を運ぶという感じでした。九州に行った時には、元婚約者と父親を除く家族と一緒にお出かけしたり家でお話したり、そんな風に過ごしていました。
元婚約者のお義母さまも、私のことを知ったうえで、田舎なのと年齢から親戚の皆は、私のような人間を理解するのが難しいので、なんとか隠してやっていけるように協力するからと応援してくださいました。
亡くなったおじいさまの仏壇に手を合わせさせていただいたとき、「自分の家族と思ってここにいたらいいんだからね。」と、おばあさまからそう言っていただいたときは、本当にうれしくて涙がでました。
何とかやっていけそう。その時は、心からそう思っていました。
元婚約者からの突然の別れ
元婚約者と離れ離れになってから、月1回九州まで行く旅費や九州で暮らすに当たっての当面の生活費を稼いでおきたかったので、もともとやっていた夜勤のコールセンターの仕事をしながら、日勤のコールセンターの仕事を始めました。
家にはシャワーとご飯のためだけに帰り、睡眠は夜勤の仕事の間の仮眠と移動中。そんな生活を1年間したのですが、案の定どちらの仕事も辞めたとたんに原因不明の高熱に倒れて、九州に旅立つ前日に入院することになりました。
「入院したから、そっちに行くのちょっと先になりそう。」電話で元婚約者に伝えると、元婚約者から「もう、来なくていいよ。来る必要なくなった。」と言われた。よくわからなくてどういうことか聞いてみると、自分では父親を説得できないとしか言いません。
付き合っていた時から、自分の父親は九州男児で厳しくて頑固者で、私のような人間と付き合っていること自体よく思っていないどころか認められないそうで、さっさとけじめ付けて帰って来いといわれていると聞いていました。
それでも、九州に呼んでくれたのは、父親が単身赴任で遠くに行き、大きな年行事くらいしか帰ってこなくなったからだと聞いていました。
「結婚も考えたけど、もうこれまでにしたい。」
そう言ったきり、申し訳ないしか言わなくなってしまい、それに対して理由を問い詰めたり、怒りをぶつける私の姿ははたから見たら無様だっただろうなと思います。
元婚約者との母とのやり取り
元婚約者のお義母さまからも電話があり、「さっき息子から聞いたんやけど、そんな急に別れるって、いったいどうなってるの?」と驚かれていました。お義母さまから本人に理由を聞いても、何も言わないとのことでした。
一緒に看護師になってほしいと元婚約者に言われて、遠距離の間仕事の合間を縫って勉強して、九州の看護学校の受験を受けて入学も決めていました。
すでに入学金も収めて、制服も届いていたのです。
それを側でずっと見ていたうえでの突然の別れでした。
こればっかりは、理解できない。あまりにも無責任だ。とお義母さまもおっしゃっていました。
でも、付き合うっていうのは、片方の思いだけではどうしようもならないもの。本人にその気がなくなってしまったのならどうしようもないし、今後どうするのか本人ともう一度ゆっくり話すよう、こっちからも言っておくからと言ってくださいました。
結局翌日の電話でも結果は同じでした。
看護学校も行きたかったら行ったらいいが、自分は何にもしてあげられないと突き放されて終わりました。
もう気持ちは全くないんだな。発言や声からもひしひしと伝わってきました。
本人からは、父親を説得できないと聞きましたが、それが本当の理由なのかは今も分かりません。
でも、もう気持ちがないのだけはわかりました。
片方の気持ちだけでは関係なんて成り立ちません。お義母さまのおっしゃる通りです。
こうして、元婚約者との約4年の関係はあっさりと終わってしまいました。
MTFとしてはじめて味わった挫折
ニューハーフのお店を辞めてから、出戻りした期間を除いて、特に不自由することなく女として生きてきました。
仕事でもプライベートでも、元男だからということで、特に嫌な思いをすることもなければ、困ったこともありませんでした。でも、ここに来て初めて挫折を味わいました。
それまでは、自分の身内以外には元男ということを伏せて生きてきましたし、もう女として生きるんだからと自分と同じMTFやニューハーフとの関りを避けて生きてきました。
この出来事を相談できる相手が誰もいない。自分の素性を明かせないので、ありのままを相談できないのです。ありのままをぼやかして話をしても、ぼやけた話がよく分からない方向へ行ってしまうだけでした。
自分の母親に相談しても、最後には「男なんかいっぱいいるわよ。いつまでも落ち込んでないで、次の恋でも初めて、元気を取り戻しなさい。」と言われました。確かにその通りなんですけど、どうなんでしょうか。
“男なんていっぱいいる”と言いますが、私のような人間でも振り向いてくれたり、お付き合いまでしてくれて、さらに結婚まで考えてくれる男となると、どんどん数が絞られてくると思うのです。
一般女性からしたら“男なんていっぱいいる”のかもしれません。そこから好みの問題とかいろいろ絞られることはあったにせよ、私のような人間に比べればその数は多く残るものだと思います。
やはりどこかピントがずれているような気がして、なんかスッキリしないまま話が終わってしまうのです。
今の自分の抱くモヤモヤはいったい誰に相談すればいいのだろうか。
この出来事が当時の私の考えを大きく変えることになりました。
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